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ペルー水事情

Lima下水

人口集中により肥大化するペルーの首都リマLimaの、もう一つの大きな水問題は
下水処理だ。飲料水「上水」は、生命の維持に不可欠なため最優先の課題として
政府・自治体が供給整備を図り、暮らす人々も生きるために飲み水の確保を図る。
水を欲するのは、動物としての本能で、生物は水辺に集い生活をする。そして水
を飲めば、屎尿を体外排泄をする。生活が豊かになれば、料理や洗濯の生活排水、
産業が発展すれば工場排水が発生する。
この問題は、古今東西、世界共通の問題だ。しかし、人類が他生物と異なるのは
発生する排水を「下水」として処理できることだ。



リマ市は、都市名の由来からもリマック川を基として発展した都市であり飲料水は
国営企業であるSEDAPALによって供給されている。近年の経済発展により、豊かさ
を求める多くの人々が移り住み、郊外に簡易な住居を建設し、そんな住居群がスラ
ム街となりリマック川沿いに拡大している。これら住民に対して、SEDAPALは飲料
水を供給しているが、下水処理は簡単にはいかない。
スラム街からの多くの排水は、未処理のままリマック川に放流されているのが現状
で、川は水の供給源であるとともに、排出先としても便利だ。



それでも、リマ市はペルーの首都であり、SEDAPALは下水処理場の整備を図って
いる。その一つがCARAPONGO下水処理場で La Atarjea のリマック川上流20km
に設けられている。内陸部へ走るセントラル自動車道を行くと鉄路を跨いだリマ
ック川沿いにあり、門扉を入ると確かに下水処理場の独特の臭いがする。



不見識で申し訳ないが、ペルーにおいてどのような排水処理が行われているのか、
実はよく知らなかった。最新の高度処理設備が整備されているとも思わなかった
が、活性汚泥法程度の初歩的な処理は行われていると思っていた。しかし下水処
理場へ入っても、コンクリートで造られた水槽設備は見えず広い敷地の木々の向
こうに、大きなため池が見えるだけだ。



CARAPONGO下水処理場での処理方式はラグーン方式と呼ばれる。海外との交流
の中で、時折出てくるラグーンLagoonと言う言葉があるがLagoonの本来の意味
は地形を指す言葉で海辺などで、内湾等が閉ざされ湖沼化したものを言う。
そのため、Lagoonに排水するとは自然の湖沼に直接排水を放流すると思っていた。
しかし、下水処理場のラグーンは意図的に造成したため池であり排水処理施設だ。



下水排水を処理するラグーン方式は自然界に存在する様々な自浄作用を利用した
処理方式で利用する自浄作用によりいくつかの種類がある。そう言えば日本にお
いても畜産糞尿処理等において利用されている方式がこれだ。素堀りのため池に
屎尿排水を流入させ滞留時間を取り処理を行うもので、広い水面積により太陽光
線にて蒸発、光合成による吸収、微生物の働きにより有機物等を分解除去する。
しかし、あくまでも自然界の自浄作用によるものなので大きな水質浄化効果はな
く、多くが悪臭を発する。



CARAPONGOは、日本のコンサルによる設計で、ODAにより造られた嫌気性池と好
気性池を組み合わせたラグーン方式だ。現在は嫌気性池は利用されていなかったが、
曝気装置を設置した4つの曝気式ラグーンにて好気性処理を行っている。
CARAPONGOに流入した下水は、先ずスクリーン、ストレーナと呼ばれる夾雑物除
去装置にて、大きな浮遊物やゴミが取り除かれる。
ゴミが取り除かれた後、流路にて曝気式ラグーンへと流入する。曝気装置の設置さ
れたラグーンが4槽あるが一系統ではなく、2系統に分離されて各2つのラグーン
にて処理されている。






曝気式ラグーンでは、大出力の曝気装置が盛んに、空気を送り微生物に酸素を与え、
ラグーン内水の撹拌流動を図っている。曝気式ラグーンの有機物分解は、滞留時間、
汚泥濃度、温度、排水の性質等に支配されるが、その分解速度や効率は曝気方法、
曝気量、汚泥微生物の活性化度により左右される。効率が落ちると堆積汚泥などが
増加し、ラグーン内の有機物分解が上手く行われず悪臭を発生する。



曝気式ラグーンにて処理された排水は、沈殿ラグーンへと流下する。沈殿ラグーン
では一定の滞留時間を取ることにより排水中の汚泥、浮遊物を沈殿させ、上澄み水
が処理水となる。



沈殿ラグーンも2つあるが、一つは体積汚泥の排出のため使用はしていない。その
機能している沈殿ラグーンも堆積汚泥で埋め尽くされ、滞留時間も取れぬまま表面
水が通過していく状態となっている。
処理水の状態はどうかというと、それほどの悪臭は感じないが透明度は低く、日本
の排水処理ならば処理水とはとても言えない。



そして、最終工程で塩素滅菌をしている。下水中に含まれる多くの病原菌を消毒する
ためには必要不可欠だが、あまりにも塩素に頼りすぎるのも如何なものなのか??。
滅菌処理後、処理水はリマック川に放流されるが、この下流20kmにある La Atarjea
にて、取水され、飲料水となることを考えれば、これも致し方ない。



下水処理場敷地内には、こんなものもあった。
日本のODA により造られた太陽光発電設備だ。2012年の日付なのでまだ新しい。
最新の太陽光パネルを利用するのは節電や省エネ、エネルギー対策に良いことだ
が、果たしてこの場所に必要なのかは首をかしげる。太陽光パネルも電気のない
地域ならば意義があるが、リマには電気がある。
この資金を、同じ環境対策ならば、下水場機能向上への技術支援に使いたいもの。



根本的対策は、高機能な下水処理場を整備することが一番だが、リマック川沿い
に点在する下水処理場の多くはラグーン方式であり、このCARAPONGOは上等の
部類のようだ。
実はこの後、地方都市へ行きその現実を見ることになったがその話は次回に・・・。



本格的なラグーン方式の下水処理場を初めて見て、首都リマの下水処理がこれか、
と驚いたが、これが途上国の現実だ。経済発展が進むにつれ排水処理設備の整備も
進むと思うが、一朝一夕ではできない。日本においても、下水整備が本格的始まっ
たのはここ50年で、地方まで整備が行き届いたのはつい最近だ。
しかし、日本は古来からの環境意識と、インフラ整備を可能とした高度成長による
経済力があった。経済発展を鉱物資源に頼っているペルーにおいて、果たしてそれ
が可能なのかは大きな疑問だ。
少なくても、数年はこの状態が続くのだから、現状の改善が必要不可欠だ。
最も、その技術提案のために訪問したのだから、何とか方法を考えなければならない。

!?
 
うぉータン | ペルー水事情 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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